境界性パーソナリティ障害(BPD)の方への関わり方【現役精神科看護師が教える】

border精神看護の実践

こんにちはー意識低い看護師のはむです

皆さんは境界性パーソナリティ障害(BPD・境界性人格障害)というものをご存じでしょうか

いわゆる「ボーダー」と称される方々のことです

精神科従事者のみならず、一般社会においても関わりに頭を抱える方が多い境界性パーソナリティ障害の方々ですが、今回は意識低い看護師流、境界性パーソナリティ障害の患者さんへの接し方というテーマで記事を書いていこうかなと思います

それでは早速行ってみましょう


目次

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パーソナリティ障害とは

境界性パーソナリティ障害の患者さんへの接し方を考える前にまずパーソナリティ障害について話しておきます

パーソナリティって言うのは【その人の考え方や行動パターン】を示す言葉です。性格と言い換えても差し支えないかなと思います

生まれ持った気質と今までの人生経験の積み重ねによりこのパーソナリティは形成されていきます


誰しも性格の長所短所がありますが、周囲に影響を及ぼしたり、自分自身が極度の生きづらさを感じない程度だったら別段問題ないのですが

考え方や行動パターン・感情のバランス が極度に偏り、対人関係でのトラブルや自分自身に極度の生きづらさを感じている人たちと言うものが存在します

上記の状態になっている人をパーソナリティ障害と定義づけられたりしてます


このパーソナリティ障害、ざっくり3群に分かれております

A群:変わり者タイプ

・妄想性パーソナリティ障害

被害妄想に囚われている方々

・スキソイド(統合失調質)パーソナリティ障害

感情表出が乏しく、社会との関係性が希薄な方々

・統合失調型パーソナリティ障害

統合失調症に近い状態に陥る方々。



☆B群:感情や行動の揺れ動きが激しい方々

・反社会性パーソナリティ障害

倫理観や道徳観に希薄で、反社会行動に対する問題意識が湧かない方々


・境界性パーソナリティ障害

※本記事で書くため割愛

・自己愛性パーソナリティ障害

自己評価が課題で、他者からの評価が無いと強い不満を抱く方々

・演技性パーソナリティ障害

演技がかかった行動で人の注目を引こうとする方々



☆C群:不安感の強いタイプの人々

・回避性パーソナリティ障害

他者からの評価を拒絶し、対人関係などを避けたりやり過ごしたりする人々

・依存性パーソナリティ障害

人への依存が強く、周りに合わせようとしたり人に決断を任せてしまいがちな人々

・強迫性パーソナリティ障害

完璧主義でこだわりが強く、ルールを守ることに固執する方々


すごくざっくり書いていますので、また調べてみてください。

上記の分類を見た時に「え?私もそうかもしれない」「あ、自分の家族はそうかもしれない」と思うかもしれませんが、だれでも上記のどれかの傾向はあると思うのでそんなに気にしなくてもいいんじゃねえかなって思います

私も自分が回避性あると思っていますが、そんなに気にしてないです。

自己診断は結構危険です。

  • 考え方が偏っている
  • 感情・衝動のコントロールがあんまりできない
  • 臨機応変に対応できない
  • 安定した人間関係の構築に苦労する
  • はっきりと上記の原因と言えるものがない

とかがパーソナリティ障害全般の特徴になります


そして本記事のテーマになっている境界性パーソナリティ障害もこの様々なパーソナリティ障害の一つと思ってもらえればいいのかなぁと思います


境界性パーソナリティ障害とは

境界性パーソナリティ障害とは先ほども述べましたがパーソナリティ障害の一種です

有病率はアメリカの研究で2%程度だと結果が出ているそうです(MSDマニュアルより)。日本では研究されていないそうです。


境界性パーソナリティ障害の方には以下の特徴があります

・生きづらさや不幸せさを感じる

・人に見捨てられることに強い不安を抱き、なりふり構わない行動をとる

・自分が何者か分からないという感覚を抱く

・対人関係が安定しない(自分から離れていく場合もあれば、周囲が離れていく場合もある)

・アンビバレンツな感情(好き・嫌いという感情の同居)

・周囲の人間が激しい感情の揺れ動きについていけない

・不適切で激しく制御困難な怒り

・傷つきやすい

・自己肯定感が低い

・自殺のそぶりや自傷行為を繰り返し、周囲に動揺を与える。

・自分を傷つける行為(買い物、薬物、アルコール、性交渉などなど)に依存する

・ストレスによる精神病様症状(解離等)

大体こんな感じです

  • 傷つきやすい
  • 不安が強い
  • 周囲を振り回しがち
  • ネガティブ
  • 他人と自分との線引きが苦手

上記のパーソナリティ障害の人の特徴と合わせて、こんな特徴のある人と捉えてもらえるといいのかなぁと思います

「え?私滅茶苦茶当てはまってるんだけど!!」って思う人は絶対に発生すると思うので、再度述べますが自己診断はしないでください

境界性パーソナリティ障害とは言えない人でも上記の特徴に何個か当てはまるもんだと思います。私にも当てはまる項目はあります

自分や家族・友人の生きづらさの原因や、はこれじゃないかとどうしても気になる方などは精神科への受診を検討しましょう。自己診断は危険です。




対人操作性


境界性パーソナリティ障害の周りを取り巻く家族や友人、医療者などはBPDの方の【対人操作性】という特徴的な行動に振り回され、悩まされることが多いです

【対人操作】とはBPDの方の見捨てられたくない・関わってほしい・自分だけに注目してほしい・思い通りに人に動いてもらいたい・受け取った言葉と解釈の大きな相違などの特徴から起因する、他人を操作しようとする行動のことを思ってもらえればいいのかなと思います。

投影同一化という防衛機制が顕著に働いている状態とも言えます

この操作には概ね2種類があります

依存のための操作



好意をふるまったり、特定の対象にだけ悩み事を打ち明けるなどして「〇〇さんなら私の希望に応えてくれるよね?」という状態を作り出します。依存のための操作です

医療の場でいうと患者さんが医療者に対してに対して陽性転移(医療者に対してポジティブな感情を抱く)している状態とも言えます

精神科病棟でもしばしば、依存のための操作を受けた看護師が、その患者さんに陽性逆転移(医療者から患者へのポジティブな感情)し、その患者さんに対し優しく献身的な姿勢を見せることがあります。

別に悪い事じゃないんじゃないかなと思う方も多いかもしれませんが、次の操作が非常に問題で、そこに頭を悩ませる医療者は多く存在しています

攻撃のための操作

対象を陥れるための悪口や根掘り葉掘り無い噂、嘘などをつくことがあります。攻撃のための操作です

主にパーソナリティ障害の方自身が嫌いだと思っている対象や、思い通りに動いてくれず失望した対象に対して見られることが多い感じがします。

医療の場で言うと陽性転移の対象への失望等の要因で陰性転移(医療者に対してネガティブな感情を抱く)が起こった場合に顕著なのかなぁと思います

先ほど述べた逆陽性転移した看護師に対して、この陰性転移を向けられてしまうので看護師のメンタルはズタボロになることは多いです

患者さんに対して献身的に関わっていたのに、ふとした出来事で急に患者さんから罵声を浴びせかけられるような場面を想像していただけたらなと思います

こういう場面って看護師側も「なんでこんなに尽したのに酷い仕打ちを受けなければならないんだ!」と怒りを覚え「何が悪かったんだろう、どんな期待に応えられなかったんだろう」と罪悪感を覚えます。んで患者さんに陰性逆転移(医療者から患者へのネガティブな感情)します。

精神科病棟だけで発生しているものではありません。

身体科病棟や外来、訪問看護の場などの現場や、日常生活の場なども含め、どんな時にでも発生しうる場面なのかなと思います

皆さんも頭を悩ませたことはあるんじゃないでしょうか?もしかしたらその方はボーダー気質な方なのかもしれませんね

textbook
https://notautinurce.com/2021/08/28/textbooks/



境界性人格障害の方への関わり方

では本題の境界性人格障害の方への接し方について書いていこうかなと思います

前もって言っておきますが、ここで書く関わり方は境界性人格障害の方と関わる際に自分を守る手段という視点で書いています

境界性人格障害の方の行動変容等を促すと言った視点では書きません。というか私書けません。

その辺は本職の方が長い時間をかけてカウンセリング等を行い、改善に向けた取り組みを行っていくものなのかなと思います

心理の素人たる我らが必死に行動変容を促しても、うまくいかない事の方が多く、関わる人が疲弊する結果に終わることも多いように思います


ではなぜ、そのような方々が精神科に入院するのかと疑問を抱く人は少なくないのかなと思います

  • パーソナリティ障害という気質があることで発症した二次的な精神疾患(うつ・適応障害・統合失調症・摂食障害などなど)の治療
  • ストレスなどで起こる精神病様症状の治療
  • 大量服薬などの自殺未遂
  • 家族の疲弊や家族関係の調整

などの要因で精神科に入院される方が多いのかなといった印象です

そもそも境界性パーソナリティ障害と診断を受けて入院される方も近年少ないとは思います

話しが脱線しましたが、いきましょうか

※以下境界性パーソナリティ障害という言葉が頻出するので、BPDと書きます

※あくまで意識低い看護師流の関わり方例です。エビデンスもクソもありません。

できることとできないことをはっきり明示する

できることとできない事をしっかり明示することは必要なのかなと思います

BPDの方が「対象に動いてもらいたい」ことが、援助の限界を超えることはしばしばあります

また援助者側も「まあ、これくらいならいいか」と援助の限界を超えてしまう事もあります(看護師でいうと業務を過度に圧迫する傾聴・部屋の電気を真っ暗にしてほしいという訴え等)

援助者のその行為は、BPDの方にとっての限界の基準(依存度の上昇)となり、さらにその限界を超えようとします

それで対応の限界を感じた援助者が、BPDの方の依存に対して対応困難感を示すと逆転移を食らう可能性があり、双方ダメージを負う結果となることも多いです


そこで、BPDの方と関わる時に、その都度できる事とできない事をはっきり伝えていくという線引きの必要があるのかなと思います

ただ、できないと切り捨てるだけでは、BPDの方も見捨てられ感を強くしてしまう可能性は高くそれが原因で不穏になることもありますので、出来る範囲(援助の限界内)でBPDの方が安心できるように関わっていくことも同時に伝えると良いのかなあと思います

パーソナルスペースも考えた援助も必要になってきますよね・・・

看護師仲間のゴリオさんがブログgorioblogにてパーソナルスペースについて分かりやすく書いておりますのでそちらを是非参照してみてください


ルールを定める

上記項目と似ておりますが、BPDの方と援助者間でルールを定めるといったことを私はよくします

例えば、いつまでも援助者と話をしていたいBPDの方と関わる際には「10分、話を聞きます」と前もって伝えておくことは多いです

時間のルールですね

その時間を超えたら、スパッと話を切って終わるようにしています

そのことに怒る方も多いし、しばしば時間を延長しようとする方も多いですが、そこに動じず決めておいたルールを遵守することを伝えることで納得される方も多いですし、「あーこの看護師はこういう人なんだな」と思ってもらえるような取り組みはしてます

その他【家族についての話はしない】【援助者の悪口の話はしない】【薬に関する話はしない】など、内容についてのルールを定めることは多いですかね。特に看護師の限界を超えてきそうな内容についてはあらかじめセーブしておくことが私は多いです。

その辺の線引きは結構大切かなって思ってます

ルールを定める際にはキチンとルールの理由をBPDの方に伝えることもお忘れなく。納得できない線引きには陰性感情を抱かせる可能性は高いかなって思ってます

自分のスタンスをはっきりさせておく

さっきから線引きってワードを使っています。

上記2つはBPDの方を援助者に使づけないための線引きの手段を書きましたが、【自分のスタンスをはっきりさせておく】って言うのは援助者がBPDの方に近づかないための方策として必要なのかなと思っています

どうしても、援助者はBPDの方に引き込まれがちです

BPDの方は援助者に「何かをしてあげたい!自分が力になってあげたい!」と思わせる事に長けています

援助者の方からBPDの方に近づいていくんです

そのために援助者自身が自分の中で「BPDの方に関わる時、このスタンスは崩さない」といったものを作っておいた方が、ラクに関われるのかなと思います

出来るだけ負の感情を見せない

BPDの方から理不尽な陰性感情をぶつけられる際には、あんまり陰性感情は見せないようにしています。

理不尽に怒鳴られることは多いのですが、私の場合は無表情で対応することが多いですかね

怒りや悲しみ、恐怖感などを自分に感じた時、「あーこの人もこんな感情を抱いているんだろうなー」だなんて思いながらなんとか自分と相手を俯瞰してみる取り組みをします。

「こんな感情を抱いているのかな?」と聞き返したりして、BPDの方の一瞬の激情を鎮静化できないかなって思いながら対応しますかね

逆に援助者の陰性感情をあらわにすると、またその陰性感情が相手から返ってくるという結果になりがちだと思うので、出来る限りその場での陰性感情の表出は避けるようにしています

とにかく【冷静に、落ち着いて】の対応が基本となってくるのかなと思っています

代わりに看護記録や同僚の愚痴なんかで陰性感情を発散してます。めっちゃ長い記録書きます。


冗談を言わない・無責任な発言をしない

他人とのコミュニケーションをする際に【冗談】っていうツールを使う方は多いと思います(関西の人は特に)

もうね、絶対に言わないようにしています。

BPDの方は援助者から受けた言葉の裏の意図を捉えられず、本気に捉えがちですので、その冗談も本気にとらえる傾向にあります

冗談を許容できる程、心に余裕がありません

その冗談を本気にしたBPDの方が、あの時の言葉は冗談だと知った時に覚える失望感は計り知れないものがあります

なので、冗談は殆ど使わないようにしています。


無責任な発言も同様です

「きっと生きてたらいい事あるよ」などに代表される無責任な発言も本気で受け取り、心のよりどころとするBPDの方もいます

中には「前にこんなこと言ってたじゃないか!嘘つき!責任とれよ!」だなんて詰めてくる人もいます。その人の立場から考えるとごもっともなことも多いです

できるだけ発言には責任をもちながら対応する必要があるのかなぁと思います

批判しない

よくBPDに纏わる特徴的な行動(過度な悪口や嘘、身体活動の低下や自傷行為等)を目撃した援助者は、行動変容を促すべくBPDの方に対して批判的な声掛けをすることがあります

これをすると、BPDの方は強い見捨てられ不安が先行して、強い感情の揺れ動きを見せることがあります

余計対応困難となる可能性もありますし、BPDの方にとってもよろしくないので、できれば批判的な物言いは辞めておきましょう

悪口や嘘等に対しては受け流す方向で関わるようにしています

あと自傷行為や身体活動の低下などが見られた場合は、「見捨てたりとかはしないから安心してね」と声掛けしたりすることが多いですかね。あくまで一例ですけどね


希死念慮を持つ患者さんへの対応法はこちら↓



境界性パーソナリティ障害についての勉強をする

わりと皆さん「ボーダーボーダー」と言ってたりしますが、実際何も勉強せず感覚的に言ってることが多いのかなと思います

本を1冊読んでおくとちょっと対応について考える機会が出来ると思いますので、本を1冊読んでおくことをお勧めします

私が分かりやすいなーって思った本を数冊紹介しておきます


境界性パーソナリティ障害の方が一番つらいという前提を忘れない

BPDの方と関わるのはあまりにも辛いものです

その辛さから、自分の感情にしか目が向かない援助者も多くいると思います

「私ばっかり辛い思いして!」と思う人は多いです

でも、その援助者の感情って、BPDの方に伝わっていたりします。BPDの方は相手の感情についてはかなり敏感で繊細です。

「私の事を理解してくれない」という思考になっていきます

前提として「BPDの方は周囲の人より辛い体験を続けている」という認識は忘れない方がいいのかなと思っています

境界性パーソナリティ障害だと決めつけない


前述しましたが、昨今BPDの診断がつく人は少ないです

それ故に、援助者側が勝手に「この人はボーダーである」と決めつけてしまうことがあります

んで、BPDに対して強い陰性感情を持つ援助者が、そうでない方に対して不適切な関りをしたり、介入を拒否したりする例は結構多いのかなと思っています

それは専門職の姿勢としては間違っていると思うので辞めときましょう

診断するのは医師の仕事です

境界性パーソナリティ障害の方との関わり方まとめ

つらつらと関わり方について書いてきましたがまとめると

  • 適切な距離感をとる
  • 冷静に対応する
  • 無責任な発言をしない
  • 批判しない
  • 勉強する

になるのかなと思います


・・・医療従事者の方なら気づいた方もいると思いますが、実は上記の対応法ってBPDの方に対しての特別な対応法では無いんですよね

なんのこっちゃない、他の患者さんと変わりのない対応をするだけなんです

何か特別な対応をする必要は無いのかなと個人的に思っています

【援助者の援助できる範囲内での個別性のある対応】の範疇を脱しなければ問題ないと思っています


それがBPDの患者さんに悩まされ続けた一人の意識低い看護師の結論でした


もちろん、パートナーがBPDだったりすると、もうちょっと考えることは多いのかなと思いますが、書いている本人は看護師なので、看護の限界を超えた内容についてはここでは書くことが出来ません。ご了承ください。

なんか私の説明に納得いかない方結構多そうですよね

以下の記事なんかも見ていってはどうでしょうか?操作性についてもうちょっと踏み込んで書いてあります





まとめ

今回は意識低い看護師流、境界性パーソナリティ障害の患者さんへの接し方 というテーマで記事を書いてみました

参考になりましたかね?

案外「おいおい、何にも参考にならねーじゃねーかよ」って思う方も多いのかもしれません。

でも、その気持ち自体がもしかしたら、操作されているという証拠になるのかもしれませんね



またね!

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