精神疾患の【病識】と【病感】:患者さんの治療行動の変容への介入に悩む方へ

精神看護の実践

精神科の看護師さんでも、身体科の看護師さんでも、なんなら看護学生さんも「患者さんにも治療に対して取り組んでもらいたい」と日々考えている方は多いのではないでしょうか

自分の問題に対して向き合うことが難しい患者さんは多いです

・服薬継続をしてもらいたい
・受診継続をしてもらいたい
・睡眠リズムを整えてもらいたい
・飲食に対して適切な摂取量を維持してもらいたい


そんな患者さんに行動変容してもらえるようなアプローチを日々看護師は行っています

しかしながら、他者に行動変容を促すという事は非常に難しいですよね

というわけで【精神疾患の病識と病感:患者さんの治療行動の変容を促すための知識】というテーマで記事を書いていこうと思います

今回、精神疾患にフォーカスを当てて書きますが、身体科の看護師さんなどでも応用できるようなものをご紹介したいと思います

よろしくおねがいします

目次

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病識と病感とは

精神疾患を持つ方で【病識がない】【病感がない】方は多く、精神科看護の場においても、そのような患者さんと対峙することは多いです


病識とは自身が病的な状態だと自覚・自認することを言います

私たちが発熱やその他感冒症状がある場合に「これは風邪をひいている」と認識することは病識です


病感とは、なんとなーく自身が病的であると漠然と感じることを言います

「何かおかしい」「なんだか変な感じする」と言った、何らかの齟齬があることが分かる状態をさします

私たちが「なんか体がだるいような気がする?」「なんかいつもより不調であるように思う」などは病感と言って差し支えないのかなと思います


これらは

・自身の精神疾患に対する認識
・自身の治療や服薬に対する認識
・自身の精神症状に対する認識



など、複数の認識から成る複雑な概念を指す言葉となっています(病識評価尺度(sai-j)より)

そこで、上記3つの事柄について目の前の精神疾患の方へのアセスメントを深めていく必要があります

精神疾患に対する認識

まずは自身の精神疾患に対する認識のアセスメントは大切ですよね

要するに自身が精神疾患であるか気づいているかどうかです


・自身の中に精神疾患があるという事に気づいているのか

・気づいていても否認しているのではないか

・精神疾患名を知っているのか否か

・病名と症状について治療者との認識のずれがあるのではないか



この辺のアセスメントは必要になってきます

特に疾患名と症状のずれは私たちも起こりやすいですよね(統合失調症の症状に不安・抑うつ症状があることを知らない看護師さんが多いみたいな感じです)

疾患への否認もそうです。うつ病であると言われ「まさか自分がそんなわけない」って思う人も多い現代日本です

思ったより患者さんは自分が精神疾患であるという事に対して気づけておらず、またそれを言語化できる語彙力を持ち合わせていることも少ないです

治療や服薬に対する認識

治療や服薬に対する認識 についてのアセスメントも必要です

コンプライアンスの遵守についてです

・治療の意味を理解しているか

・治療の必要性をどう思っているか

・治療をどのように継続しているのか

・治療に関しての気持ちはどう思っているのか


この辺に関してのアセスメントは必要になっています

中には自分は問題ないと思っていても家族に言われてだとか、もう入院したくないから仕方なく、しぶしぶ受診している方なども多く存在します

精神症状に対する認識

自身の精神症状についてどう思っているのかも大切な所ですよね


・今現在自分に起こっていることが精神症状であることを理解しているのか

・自分の病的体験が病的体験であると区別できているのか

・精神症状による困りごとがあるのか否か

・今起こっている精神症状が精神疾患のために起こっていると思っているのか


などのアセスメントは必要です

特に精神症状の存在には気づいているものの、それが不眠や食欲不振、種々のストレス、または内服薬のために生じており、精神疾患から生じているものでは無いと思っている場合は滅茶苦茶多いです

また統合失調症の未治療で経過の長い患者さんなどは病的体験が当たり前の世界で生きているといった方も数多く存在しています。私たちも現在生じている目の前の事柄が、実は精神症状なんですよと言われても信じられないですよね?そんな感じです

https://notautinurce.com/2021/08/24/crisisplan/


複雑に絡み合い一つの病識ができる

これらの要因が複雑に絡み合い、その患者さん独自の病識が完成します

よく「病識が無いため服薬拒否する」とアセスメントする看護師さんがいますが、そんな簡単な話では無いんですよね



病感すら抱いていない患者さんに対して、いきなり疾患教育を始めても、行動変容にまでは至れません

困りごとのない患者さんに困りごとに関しての介入を行っても、患者さんには響きません

治療について理解に乏しい患者さんに、治療の必要性を説いてもやっぱり理解されません


一つ一つその患者さんの認識について紐解いていくことから行動変容に向けてのかかわりが始まります

行動変容ステージのアセスメント

もう一つ、アセスメントしなければならないことがあります

それは【患者さんの行動変容ステージへのアセスメント】

行動変容をしてもらうにあたって、患者さんが現在どのようなステージにいるのかで、対策は変わってきます

ここで使用するのはプロチャスカの行動変容ステージです

行動変容は「無関心期」→「関心期」→「準備期」→「実行期」→「維持期」の5つのステージを通ると考えられています。

私たち精神科看護師はこのステージのアセスメントを行いながら行動変容に向けての介入を行っています

無関心期

無関心期にいる方は行動変容の意志がありません

精神症状により影響される地域生活における問題についての深刻さを持っていないことや、困り事が無いなど動機付けが不足し無関心になっている状態にあることが多いです

そのためこのステージの方に対しては、疾患や精神症状に対する情報提供などの介入が必要になります

例えば疾患教育などがそれに当たるのではないでしょうか

また無関心であるという思いの表出をしてもらうための治療的関係の構築も必要ですよね

関心期

関心期にいる方は行動変容をする価値に気づいているが、行動変容しないことの価値と綱引きしている状態と言えます

早い話が「ダイエットして素敵なプロポーションを得たいけど、ご飯がうまい!!」状態ですね

このステージの方にも情報提供の強化を継続して行っていく他に

精神症状で苦しんでいる自分と苦しんでいない自分とで人生がどう変わるかなど、行動変容しないことのマイナス面に向けての感情体験を促すことや

精神症状改善に向けた取り組みが、自分の人生にどう良い影響を与えるのかを共に考えたりする介入が有効となってきます



そこに向けた心理教育や認知行動療法を実践されている方も多いですよね

準備期

準備期は決意表明の時期です

行動変容に向けて決意を固めた方に対して、関心を持つ・決意を支持し環境を整える・決意表明を言語化していただくなどの介入が有効とされています

実行期

実行期は、行動変容を始めた時期です。6か月以内の時期であると言われています

この行動変容を継続していただくべく、行動変容に対する正のフィードバックを行う事や、同じ取り組みをしている方のグループを紹介するなどの関わりを行っていきます

維持期

維持期は行動変容が6か月以上続けている時期です

ここの時期になると、行動変容を続けるまでの工夫を自ら行っているようになっていることが多いです。


行動変容を必要の有無を振り返る

【病識】や【行動変容ステージ】へのアセスメントを行い、「さあ!行動変容に向けた介入を行おう!個別性に向けた介入だ!」と意気込むのはちょっと待ってください

その患者さんの行動変容って本当に必要なのでしょうか

その辺について考え直すのは必要なのかなぁと思います

医療者の主観のみで行動変容を促すケースは非常に多いです

患者さんの思いをガン無視して説得を試みる方もいますし、視野の狭さから達成困難な行動変容を強いることも往々にしてあります


患者さん・医療者・家族・社会間での折衷案を見つけるのも、行動変容に対するアプローチの一つであるという視点も忘れてはいけないのかなと思います


https://notautinurce.com/2021/09/08/matome/


まとめ

【精神疾患の病識と病感:患者さんの治療行動の変容を促すための知識】 というテーマで記事を書いてみました

具体案欲しいですよね?でもケースバイケースすぎてあんまり書けません

またnoteなどに書いていこうかなとは思っていますが、オープンな記事ではここまでしか書けないのかなと思っています


では!

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